あらすじ
高校一年生の時、死のうとしていた少女に、俺は言った。
「死ぬか? それとも、一緒に死ぬか?」
それが、俺が誰かのそばにいる人生の始まりだった。
自傷を繰り返す少女。
家族と揉める人。
恋人との別れに苦しむ人。
居場所をなくした人。
俺は、そんな人たちが立ち直るまで、ただそばにいた。
何かを解決できるわけじゃない。
特別な言葉を持っているわけでもない。
ただ、話を聞いて、隣にいる。
そして、その人が自分の足で歩けるようになったら、何も言わずに送り出す。
いつしか、関わった人たちは俺のことを「宿り木」と呼ぶようになった。
雨が降っている間だけ、身を寄せる場所。
雨が止めば、また自分の人生へ戻っていく場所。
そんな俺自身の人生も、決して平坦ではなかった。
終わらせたかったのに終わらせられなかった恋。
周囲の人間によって終わった恋。
四年間続いた恋の終わり。
そして、何より大きかった、友人の死。
葬式で泣くことができず、残された友人たちを支える側に回った俺は、知らない人間から「冷たい男」と揶揄された。
でも、本当は悲しくなかったわけじゃない。
自分が泣くより先に、誰かを支えようとしていただけだった。
そして俺には、誰にも簡単には話せない秘密がある。
心臓の病気。
いつか、手術をするか、死ぬか。
そんな選択を迫られる日が来る。
人には「生きろ」と言いながら、自分自身の未来については、すでに一つの答えを決めている。
誰かの人生を支えてきた男。
誰かの雨が止むまで、そこにいた男。
でも――
誰かの居場所になった男は、自分の居場所を知らなかった。
これは、恋愛の話だけではない。
友情の話だけでもない。
誰かを救うことの意味。
人と別れることの意味。
そして、自分自身の人生をどう生きるのかを探し続ける、一人の男の物語。