あらすじ
この街では、夜が来ない。
空に浮かぶ人工太陽が、昼も夜も街路を照らし、影を持たない人は安全な市民として扱われる。けれど、光から逃げた影は、身体から剥がれて病気になる。夜間影縫い師のリゼットは、黒糸と銀針で、暴れる影を持ち主へ戻す仕事をしていた。
ある夜、診療所の扉を叩いたのは、少女の影だけだった。
少女の身体より先に走ってきた影を追う途中、リゼットは影災対策官ルカと出会う。彼の影ノクスは、ほかの人の影を喰い始めていた。夜明けには、ルカごと処分されることが決まっている。
「あなたの影を、縫ってもいい?」
「俺には聞かなくていい。あれにも、聞いてくれ」
影に許可を求めた瞬間、ノクスは初めて口を開いた。
都市の明かりは、住民から回収した影で灯っている。地下には、影を奪われ、昼の街から存在を消された人々が暮らす「夜層」がある。母が最初の自立影を縫った罪で失踪したリゼットは、ルカとノクスを連れて、消された夜へ降りていく。
影を返すのか。影と別れて生きるのか。
決めるのは、光を持つ側ではない。