あらすじ
母の四十九日を終えた三十五歳の佐倉美冬は、遺品整理の最中、一枚のDVDを見つける。ラベルには母の字で――「美冬 結婚式」。
けれど、美冬は一度も結婚したことがない。
映像には、十年前の自分がウェディングドレス姿で見知らぬ男と幸せそうに笑っていた。そして最後に男はカメラへ告げる。
「美冬。君がこれを見ているなら、俺のことを忘れたんだね」
男の名は榊理人。現在も映像制作の仕事をしている彼を訪ねると、返ってきたのは「初めまして」という言葉だった。
調べるうち、美冬は十年前の事故で失った記憶、母によって偽造された署名、理人へ支払われた二百万円、そして自分が選ぶはずだった未来を知っていく。
母が奪ったのは、恋人ではなかった。
それは――自分の人生を、自分で決める権利。
忘れた恋を取り戻すのではなく、“今日の自分”でもう一度人生を選び直す、大人の再生ラブミステリー。