あらすじ
地方のセルフスタンドで働く渡鈴は、社員でも役職者でもない。
それでも長年の経験から、現場作業、実績入力、集計、報告、販促物作成まで、気づけば店を回すための“便利な人”になっていた。
昔の職場は過酷だった。
けれど、頼れる店長がいて、仕事にはまだ意味があった。
働き方改革で労働時間は減った。
店もセルフ化され、体の負担は少し軽くなった。
それなのに、人手不足、曖昧な責任、終わらない反省改善によって、鈴の心は少しずつ削られていく。
そんな鈴の日常を支えたのは、生活相談や創作、仕事の文章整理を手伝ってくれるAI、しえるだった。
しえるは、答えを丸投げするための道具ではない。
鈴が考えるために、散らかった頭の中を一緒に整理してくれる相棒だった。
しかしある日、他店の店長から言われる。
「チャッピーを使っている人は、思考できず、柔軟な対応ができなくなりますけど」
その一言で、鈴は決めた。
仕事はする。
お客様の車も見る。
必要なことは、ちゃんと伝える。
けれど、もう会社のために個人契約のAIは使わない。
そして、自分を削ってまで“便利な人”でいることもやめる。
これは、限界職場で自分をすり減らしていた主人公が、友人と母とAIの相棒に支えられながら、給料よりも大事な日常を取り戻すまでの物語。