あらすじ
スランプに陥り、灰色の靄がかかったような頭でただスマートフォンの青い光を眺めるだけの「僕」。小説が書けなくなり、文字すら滑って読めなくなった自虐的な日々の中で、彼の傍らにいるのは化け猫の少女「呼子(よぶこ)」だった。
構ってくれない腹いせに顔に乗っかってくる呼子は、撫でられるうちに少女の姿へと変わり、ざらざらとした猫舌で「僕」の頬を舐め、首筋を差し出して甘えてくる。
部屋の外では時計の音が容赦なく時を刻み、書けない焦燥感が「僕」を苛むが、呼子は「書けなくなっても、先生は先生よ」と静かに全てを受け入れる。
外界のプレッシャーと創作の苦しみから逃げるように、二人は暗い部屋の中で互いの体温を確かめ合う。「二人でだめになりましょう」という言葉は、呪いのようであり、救いのようでもあった。朝の訪れとともに、少年と化け猫はどこへも行けない「幸福な金縛り」へと深く沈んでいくのだった。