あらすじ
街の片隅にある、小さな紅茶専門店「純喫茶レモン」。
深緑の扉を開ければ、紅茶の香りと小さな昭和歌謡。
店内には新聞と古い本、ひとつひとつ違うカップ。そして、いつもの場所に座る大きなアザラシのぬいぐるみ。
店主の円香には、そのアザラシ――チャピの声が聞こえる。
けれど、その声を聞けるのは円香だけ。
頼れるベテランの和子さん、少し不思議な男性スタッフの直樹くん、新人アルバイトの彩音ちゃん。
そして今日もレモンには、それぞれの時間を抱えたお客さんがやってくる。
大きな事件は起こらない。
誰かが紅茶を飲み、誰かが本を読み、誰かが少しだけ笑って帰っていく。
ここでは、急がなくてもいいんです。
紅茶と、ゆっくりした時間と、私にしか聞こえない声。
小さな純喫茶で流れていく、少し不思議で、あたたかな日々の物語。