あらすじ
世界の果てには、灰色の海がある。
巨大な環壁に囲まれた街で暮らす十八歳のアキラは、「灰物」と呼ばれる奇妙な遺物を回収する仕事をしていた。
ある朝、アキラが訪れたのは、昨日まで存在しなかった扉が現れた一軒の家。
老女は言う。
「扉の向こうから、三十年前にいなくなった息子が帰ってくるんです」
扉の奥から回収された古い革鞄。
その中には、一枚の写真が残されていた。
撮影されたのは、百二十一年前。
写っているのは十六人。
だが、裏に記された名前は十五人分しかない。
そして、名前のない十六人目の青年は――
アキラとまったく同じ顔をしていた。
灰色の海とは何なのか。
なぜ、海へ光を送り続ける灯台があるのか。
世界から「名前を失う」とは、どういうことなのか。
百二十一年前の名もなき青年を追ううち、アキラはやがて、八百年前に人類が世界から切り捨てたものへ辿り着く。
これは、世界から失われたものを巡る物語。