あらすじ
「真の聖女はミレイユだ。麦を枯らす陰気な君に、この国の食を任せられない」
豊穣祭の壇上、第三王子アランから婚約破棄を告げられた公爵令嬢セリア。地味で目立たない彼女は「土まみれの役立たず」と嘲られ、聖女気取りの義妹に居場所を奪われて国を追われる。
でも――誰も知らない。この国の麦を実らせていたのは、聖女の祈りなどではなかった。前世の農学知識と、彼女だけが契約する風の精霊シルフィ。幼い頃から陰で風を操り、害虫を吹き飛ばし、受粉を助けてきたのは、他ならぬセリア自身だったのだ。
「では、麦畑のことは――もう、あなた方でどうぞ」
気まぐれな精霊は、契約者を自ら選ぶ。セリアが去れば、この国の風は二度と麦畑を渡らない。それが何を意味するのかも知らずに、王家は偽りの聖女に喝采を送り続ける。
ただ一人従ってくれた侍女ハンナと共に、セリアが向かった先は隣国グランウェール。痩せた荒れ地を治める『氷の領主』レオンハルトのもとで、彼女は農学と風の力を武器に、不毛の大地を黄金の麦畑へと変えていく。
祈りでは、麦は実らない。土は、かけた手間の分だけ返してくれる。
役立たずと蔑まれた令嬢が、新天地で本当の豊かさを育てる痛快スローライフ・ざまぁ物語。風は、優しい人のところへ――そして、前へ進む者のところへ吹いていく。