あらすじ

「あれは前任者の代わりですから、手当は後でよろしいでしょう」——雇い札にそう書かれて十六年。後で、と言われ続けております。 鳩が帰れる道は、育った巣の位置で変わります。北風の朝は年嵩の鳩から先に、雨の匂う日は若い鳩を後へ回す。壁に留められるのは今週の順だけで、その朝の読みは全部この頭の中にございました。 放つ順を書いた紙は剥がされ、廊下の柱には羽数と人数が貼り出されました。「順など、番号どおりでよい」。左様でございますね。わたくしがいなくても、お館は回ります。 では、放ち順の控えをお返しいたします。餌の升も足環も、壊しも持ち出しもいたしません。 三月は何も起きません。放った鳩は帰ってまいります。「ほら、変わらん」と仰いました。変わらないことが、いちばん怖い時間でございます。 冬、北風の続いた週に、報せの鳩が帰ってまいりませんでした。誰も怒鳴りません。ただ翌週から招きの返事が減るだけでございます。 自分の仕事場を持ったわたくしの前で「戻ってくれ」と仰った家令へ、あの一句をそのままお返しするお話。

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小説を読もう2026/08/17
  • 現在の作品用済みで手当を切られ、放ち順を置きます。冬、鳩が帰りません