あらすじ
私の通訳を無料の雑用だと笑った元婚約者は条約交渉で大失敗したそうです――今さら会談へ戻れと言われても、もうあなたの嘘は訳しません。
「本ばかり読む陰気な女では、使節夫人は務まらない」
五つの言語を操り、婚約者ディミトリの商談や外国書簡を無償で支えてきた令嬢アマランテ。
しかし彼女は歓迎会の席で突然婚約を破棄され、従妹との新たな婚約を告げられる。それでもディミトリは、翌朝までに必要な条約文の翻訳を「妻になる女が片づける書類雑用」と押しつけてきた。
「婚約者でなくなった今、私が無償で引き受ける理由もなくなりました」
アマランテは公式原本を返却し、自分の語彙帳だけを抱えて旧家を去る。
その夜、国境門で起きたのは、「贈り物」と「貢納」の解釈を巡る一触即発の騒動だった。複数の意味を示し、話した本人へ意図を確認して衝突を止めた彼女を見ていたのは、国王の弟エメラン殿下。
正式な翻訳試験へ招かれたアマランテは、初めて自分の技能に給金と権限を与えられる。
だが、正しい言葉を選ぶだけでは、人の心も国家間の交渉も動かせない。失敗と衝突を重ねながら、アマランテとエメランは互いの判断を信じるようになっていく。
やがて持ち込まれたのは、元婚約者によって都合よく意味を変えられた条約正文。
復縁と偽りの認証を迫るディミトリに、アマランテは自分の言葉で告げる。
「もうあなたの嘘は訳しません」
無料の雑用扱いされていた令嬢が、外交を守る正式な専門職として認められ、王弟殿下から盲信ではない信頼と愛を捧げられる――お仕事×ざまぁ×溺愛の異世界恋愛ファンタジー。
全六章・完結。