あらすじ
泣き方には、格というものがございます。
夫を送るときと、子を送るときと、使用人を送るときとで、上げる回数が違う。わたくしは若い時分に姑から扇の骨で指を打たれながら、三月かけてそれを覚えました。
けれど、使い分けたことは一度もございません。どの型で泣いても誰にも咎められないと知った年から、いちばん崩れにくい一つに決めております。
誰も検めないからでございます。この国の誰ひとり、他人の泣き方の中身を検めたりしない。
──たった一人を、除いて。
六年間、毎朝欠かさず泣く練習をしてきた女が、自分の泣き方がすべて数えられていたと、事が済んでから知る話。
※単話完結。この女が何をしたかは、連載『泣き女のわたくしが呼ばれたのは、誰ひとり泣かなかった公爵夫人の葬儀でした』(完結済・全30話)に書いてあります。