あらすじ
高校生活も残り二週間。卒業式を待つだけだった瀬尾奏多は、校内放送で第二音楽室へ呼び出される。
そこにいたのは、幼なじみであり、高校一年の終わりまで付き合っていた元恋人・白石莉音だった。
合唱部部長の莉音が奏多に頼んだのは、急遽弾けなくなった生徒に代わって、卒業式の合唱伴奏を務めてほしいというもの。
奏多は、莉音と別れてからピアノをやめていた。
嫌いになったからではない。
鍵盤に触れれば、二人で過ごした時間まで思い出してしまうから。
「最後に一回だけでいいから、一緒にやってほしい」
その言葉に押され、奏多は二年ぶりに鍵盤へ触れる。
久しぶりのはずなのに、莉音の呼吸も、歌い方も、合わせるタイミングも体が覚えていた。
終わったはずの関係。
忘れたつもりだった音楽。
卒業まで、あと二週間。
「卒業式まで」という期限付きで再び始まった二人の時間は、少しずつ止まっていたものを動かしていく。