あらすじ
俺は、学校で誰にも話しかけられない。
でも夜になると、三百人が俺の名前を呼ぶ。
俺の一日は、そこから始まる。
帰って、ドアの内側に貼った毛布を確かめて、配信をつける。
顔は出していない。本名も言っていない。声だけだ。
千日以上やって、一度もバレていない。
その夜、コメント欄に知らない一行が流れた。
「明日、教室で気をつけて」
数秒で消えた。書いた本人が消した。
翌日、告白された。
疎遠になっていた幼馴染に、クラスの真ん中で。
後ろの席で、誰かが吹き出すのをこらえていた。
受けた。断ると目立つからだ。
目立てば、誰かが俺の夜を探しに来る。
つき合っているふりを続けて、何日か経った頃。
彼女の喋り方に、聞き覚えがあると気づいた。
指摘を「そこ、」で始める。語尾を「けど」で止める。
うちの配信の、常連と同じだった。
教室では一度も目を合わせない幼馴染が、
名前を伏せた場所でだけ、俺に話しかけていた。
知っているのは、彼女だけじゃない。
あの警告を書いて消した人間が、まだどこかにいる。