あらすじ
~登場人物の紹介とあらすじ~
i)登場人物の紹介
ヴィオラ
澄ました雰囲気をまといながら、実は誰より行動的な令嬢。困っている人を放っておけず、列車で拾った忘れ物の持ち主を探し始める。人を励まし、ともに前へ進もうとする性格。
ザカリー
王立鉄道警備隊に属する、勝負となれば誰より熱くなる男。厳しい鍛錬を積み、危険には迷わず飛び込む一方、恋愛となると驚くほど弱い。ヴィオラとは何かにつけて競い合う。
トーマス
身だしなみを決して崩さない鉄道員。夜勤が多いため昼間は眠そうだが、必要となれば即座に動く行動派。
マリー
細かな手掛かりだけでなく、路線や人の動きを大きく捉える活発な女性。古い地図や記録を組み合わせ、探索を前進させる。
ジア
紙製ランタンを手がける職人。自分の気持ちを無理に押し殺さず、他人にも同じことを求めない。ヴィオラの恋心にも静かに寄り添う。
ドエイオン
清潔感のある技術者。数字と記録を重視し、古いビーコンに残されたデータから、十年前と現在を結ぶ道筋を読み解いていく。
ii)あらすじ
列車の座席の下でヴィオラが拾った、一つの忘れ物。
包みの中に入っていたのは、薄い敷布団、手作りの紙製ランタン、赤いリボン、そして古いビーコンだった。
紙製ランタンには、たった一文。
「雪が降ったら、笛の聞こえる場所へ」
持ち主を探そうとするヴィオラの前に現れたのは、何かにつけて彼女へ張り合ってくる鉄道警備隊のザカリー。
「どちらが先に持ち主を見つけるか、勝負だ」
そうして始まった二人の競争は、古い鉄道路線を北へ北へと辿る旅になっていく。
敷布団に残された刺繍。
吹雪の中で人を導いた紙灯り。
十年前に解散した救護隊の赤いリボン。
過去の移動経路を記憶するビーコン。
そして、雪原の彼方から響く遠い笛。
手掛かりがつながるにつれ、忘れ物には十年前の雪崩事故と、今も消えていない一人の救護員の記憶が隠されていることが分かっていく。
しかしヴィオラは、もう一つの事実を知らなかった。
競争相手だと思っていたザカリーが、ずっと彼女のそばにいた本当の理由を。
「勝つために一緒にいたんじゃない。お前を一人で危険な場所へ行かせたくなかった」
ライバルだと思っていた人は、自分を守ろうとしていた人だった。
けれど、守るためなら何も言わずに決めていいわけではない。
怒って、離れて、話し合って。
二人は競争相手とは違う、新しい関係を作り直していく。
雪原列車の忘れ物から始まる、
負けず嫌いな二人の、競争と救助と恋の物語。