あらすじ
家なき令嬢セシルが選んだのは、誰も住みたがらない「呪われた屋敷」だった。
理由は単純。家賃が、信じられないほど安かったから。
初めての夜、本当に幽霊が現れた。
屋敷の元主人だったという騎士アーロンの霊。人を襲うどころか、井戸の水の汲み方から食べられる野草まで、甲斐甲斐しく世話を焼いてくる。
「なぜ私を襲わないんですか」
「お前を怖がらせたくない」
触れられない距離で、少しずつ心を通わせていく二人。しかしセシルは気づいてしまう——感情が動くたびに、アーロンの姿がわずかに薄くなっていくことに。
このままでは、いつか消えてしまう。
古い書庫で見つけた手記が、十五年前の真実へと繋がっていた。アーロンの死は「病死」ではなかった。屋敷を継いだ弟による、隠された事件——。
「消える前に、知りたいことがある」
真実を暴くほどに近づく別れの時。それでも彼女は、諦めなかった。
生と死を越えて、この人と一緒にいたい——。
十五年の孤独と、たった数ヶ月の恋が交差する、切なくも温かい物語。