あらすじ
二年連続で文化祭実行委員を任された三宅の机に、ある朝、影山悠が三十二ミリの紙束を叩きつけるように置いていく。題は「文化祭成功のための一〇〇の提案」。最初はふざけた企画書にしか見えないが、その中身は通路の幅、看板の色、室温、客の滞在時間まで徹底して計算された、異様なまでに具体的な改善案だった。しかもそこには、去年の展示でうまくいかなかった点が、数字と記録つきで正確に書かれている。
三宅たちは半信半疑のまま読み進めるうちに、その紙束がただの思いつきではなく、影山が去年から積み上げてきた観察と記録の集積だと知る。提案は一つずつ検討され、採用され、クラス全体は影山の紙束を軸に動き始める。だが一〇〇番だけは白紙のまま残されていた。なぜ最後の一項目だけが書かれていないのか。その空白は、三宅にとってずっと忘れたふりをしていた去年の文化祭の記憶を呼び起こす。
やがて展示は、段ボールで組んだ迷路型の空間として形になり、予想以上の反応を呼ぶ。だが当日、内部で送風機のトラブルが起き、壁が倒れかけ、影山は奥で倒れ込む。三宅は担当外だったはずの役目を自分で埋め、紙束の厚みと重さの意味を、ようやく身体で理解する。影山の一〇〇の提案は、文化祭を成功させるためだけのものではなかった。言葉にしなかった一人分の思いを、紙の束にして教室へ置き、来年へ渡すためのものだった。