あらすじ
誓いを立てると、言葉は鍵になる。
王国ヴェルグラントでは、婚姻、同盟、職人の契約まで、誓約鍵に刻んで守ってきた。鍵師見習いのエナは、壊れた誓約鍵を直す仕事をしている。魔法は使えない。それでも、金属のひびと、持ち主が選ばなかった言葉を読む腕だけは誰にも負けない。
ある夜、王位継承を決める「王鍵」が割れた。ひびの内側から現れたのは、十二年前に偽鍵作りの罪で裁かれ、消えた父の名前。調査を命じたのは、王家を裏切ったと噂される冷徹な騎士団長ユリウスだった。彼の胸元にも、誰にも開けられない黒い鍵穴が刻まれている。
「俺の鍵を開けるな。開けるなら、俺が選んだ言葉で開けろ」
王国を閉じようとする七つの誓約庫を巡り、エナとユリウスは、壊れた誓いを当事者の手に返していく。やがて黒い鍵穴が、父の失踪と王国の制度をつなぐ扉だと知ったとき、二人に問われる。
誰かを守るために、誰かの選択を閉じていいのか。