あらすじ
温室の扉を開けたら、婚約者と男爵令嬢が抱き合っておりましたの。
こういうとき、令嬢に許された行動は三つですわ。泣き崩れる——却下。ドレスが汚れます。叫んで騒ぐ——却下。醜聞は独占情報のうちに使うのが鉄則ですのよ。
「ごゆっくり」
わたくし、ヘスター・ロヴェル。家業は貿易商会。商人の家の娘が最初に教わることは、こう。——感情は資産になりませんの。情報は資産になりますのよ。
翌朝から与信調査。婚約者の家の借金は金貨八千枚。わたくしの婚礼支度の勘定で、浮気相手に馬車を贈る算段まで判明いたしましたわ。
こちらから破棄すれば違約金はロヴェル持ち。ですから——わたくしより「よい金づる」を、あちらに見せて差し上げますの。
浮気相手のポピー様? あの方は被害者ですわ。ですから、商談に参りましたのよ。
復讐は一円にもなりませんもの。わたくし、回収しかいたしませんの。