あらすじ
かつて奴隷だった少年、ユーナには名前さえなかった。命令に従うことだけを教えられ、自分の意思も、自分の未来も持たずに生きてきた彼を拾い、「ユーナ」という名前を与えたのは、「平和の使者」を名乗る男―ジンだった。
剣を握れば誰より強く、争いの場では驚くほど冷静で、王侯貴族を前にしても決して怯まない。そのくせ普段は酒と賭け事を好み、生活能力は壊滅的。まだ幼いユーナの方が師匠の面倒を見ることもしばしばだった。
そんな風変わりな師匠の弟子となったユーナは、やがて平和維持組織〈アルカ〉の使者として、彼と共に七つの国を巡る旅へ出る。
国境で起こる争い、王侯たちの思惑、違法な奴隷売買、古代から残された不可解な遺跡。
さまざまな人と出会いながら、ユーナは少しづつ「命令されるためではなく、自分で選んで生きること」を覚えていく。
けれど、旅を続けるほどにユーナにはある疑問が膨らんでいった。
―師匠が自分の持つ、治癒の力を使うことを頑なに嫌がるのはなぜだろう
そして時折、ジンはユーナを見る、まるで、ずっと昔から彼を知っているような目で。
さらに旅の途中で見つかる「古代文明」の遺跡は七つの国に伝えられている歴史そのものに疑問を投げかけていく。
これは星を忘れた世界を旅する、名前をもらった少年と秘密だらけの師匠の物語。
やがて少年は知ることになる。
師匠が決して語ろうとしなかった過去には、自分自身へと続く秘密が隠されていたことを。