あらすじ

風が、廃線となった草薙駅の寂れたホームを吹き抜ける。それは、かつてここにあった人々のざわめきや、汽車の轟音を根こそぎ奪い去った後の、空虚な呼吸のようだった。雑草に覆われたプラットホームの向こう、西日の光を浴びて鈍く光る錆びたレールが、時の流れから置き去りにされた、固い過去のように横たわっている。蓮は、肩から下げたキャンバス地のバッグから、使い込まれたノートとペンを取り出した。表紙には『地方鉄道の記憶とコミュニティの変容』と走り書きされている。彼は、失われた時間を、その痕跡を辿るように、拾い集めようとしていた。 駅舎の重い扉を押し開けると、空気は一変した。外の風の音さえ吸い込まれるような深い静寂

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カクヨム
カクヨム2026/08/16
  • 現在の作品錆びた時刻表と、君の空白の時間