あらすじ

「ニンニク入れますか」。店主が問いかけるのは、客ではなく、もやしの山だ。増し増し。背脂。カラメ。男たちは黙々と啜り、誰も店主の顔を見ない。看板も暖簾もない二郎系の店。 三軒先に、豚骨にほうれん草を沈め、ごはんを添える店、「清水家」がある。暖簾は褪せて、閉店の紙の端だけが風に返る。店主は、そのほどけかけた暖簾の結び目を、片方だけ、結び直す。 夜更け、消えた看板の奥で、店主はひとり、ある一杯を作りはじめる。中太の麺を、やわらかめに。それは、昼の店では決して出さない味だった。

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カクヨム
カクヨム2026/08/16
  • 現在の作品のれん —— 増し増しの丼の、いちばん奥の味。——