あらすじ
「セラフィーナ・アルディス! お前との婚約を破棄する。この橋を渡り、俺との縁を今ここで断つ!」
王太子の生誕祭。国境の渓谷にかかる『夕暮れの吊り橋』のたもとで、第二王子リオネルは継妹アメリアを腕に、婚約者セラフィーナに別れを告げた。哀れみと嘲笑の視線が降り注ぐ中、しかし彼女は涙も見せず、ただ静かに微笑んだ。
なぜなら――彼女は『橋守の一族』の末裔。前世の記憶を持つ文献オタクとして、この橋にまつわる伝承の“本当の続き”を、誰よりも知っていたから。
『別れを告げる者だけが渡れる。渡り切った者は縁を、立場を、名を……そして“資質”までも、霧に置いて逝く』
別れを告げたのは、私ではなくあなた方。ならば――渡るのは、あなたの方です。
「渡った者は二度と戻れない」と知りながら、セラフィーナは黙って二人を橋へと見送った。血のように赤く染まる夕陽の下、橋が静かに量り始める。二人が背負った、嘘と裏切りの重さを。
すべてを清算した後、彼女を待っていたのは、漆黒の角を持つ一騎当千の竜将軍との、穏やかで温かな“こちら側”の日々だった。
淡々と、けれど痛快に。捨てられた令嬢が、伝承の力で運命を還す物語。