あらすじ
2048年、スポーツ界の主役は人間から自律型AIロボットへと移り変わっていた。
身体能力でも確率計算でも、人間は決して機械には及ばない。かつて国民的娯楽だった人間のプロ野球は衰退し、いまや観客の熱狂は、各メーカーの最新AIたちが魅せる「メカニック・ベースボール」に独占されている。
斜陽産業となった人間のリーグで、前人未到の「65本塁打・25勝」という大記録を打ち立てた東京ジャイアンツの孤高のエース、高梨健吾。しかし、彼自身は「どれほど努力してもAIには勝てない」という絶対的な壁の前に虚無感を抱き、すっかり野球への情熱を失っていた。
シーズンオフのある日、健吾は息子にせがまれ、渋々AI野球の試合を観戦しに行くことになる。
完璧な計算に基づいた無機質なプレーを見せられるだけだと思っていた健吾だったが、超満員のグラウンドで彼が目にしたのは、観客を熱狂させるためにあえて泥だらけになり、感情をむき出しにして白球を追う機械たちの「泥臭い」姿だった。
なぜ自分は野球を始めたのか。
完璧なAIが見せた不格好なフルスイングが、冷めきっていた天才の心に再び熱い火を点ける。
これは、機械仕掛けのスタジアムで、人間がもう一度「夢」を取り戻すまでの物語。