あらすじ
世界には、まだ誰にも届いていない「響き」がある。
それは、忘れられた歌。
失われた祈り。
歴史の中に消えていった、人々の想い。
東方魔術と西方魔術、二つの系譜を受け継ぐ魔導士ユズキは、白茶猫ティロルと共に、世界に残された記憶の旋律を探す旅を続けていた。
母から受け継いだ「世界の音を聴く力」。
父から受け継いだ「世界の音を理解する力」。
異なる二つの魔法思想を宿す彼女は、失われた世界の響きを再び繋ぎ合わせるため、各地に残された記憶を辿っていく。
次に彼女たちが向かったのは、かつて数多くの船が海へ消えていった国、スペイン。
港に残された古い錨に触れた瞬間、ユズキは一隻の船の記憶へ導かれる。
それは、新たな世界を求めて大海原へ旅立ったサンタ・マリア号。
そこに残されていたのは、偉大な航海者の伝説ではなく、恐怖を抱えながらも、歌うことで互いを支えた名もなき船乗りたちの声だった。
黄金を追った者。
自由を求めた者。
誇りのために戦った者。
そして、海の向こうへ消えていった者。
七つの海には、まだ誰にも語られていない記憶が眠っている。
ユズキは海に残された魂の歌を辿りながら、世界から少しずつ失われ始めている「何か」の存在へ近づいていく。
これは海賊の物語ではない。
七つの海に刻まれた、人々の命の響きを探す旅の物語である。