あらすじ
「祖母の名誉を、どうか回復していただきたいのです」
王室文書院の記録官ヴィンターは、十年前に横領の疑いで婚家を追われ、失意のうちに亡くなった伯爵未亡人エルスベートの名誉回復請願を受理する。
調べを進める中、文書庫の奥から、判事宛の未開封の手紙の束が見つかる。九通、いずれも「未達」の判が押されたまま。
開封して読み進めると、そこには冷静に事実を積み重ねる、彼女自身の言葉があった。義弟による横領の証拠、そして「事実を書き残したという記録だけは、残ることを願う」という最後の一文。
なぜ手紙は届かなかったのか。真相は、意図的な隠蔽だった。
現在も有力な義弟の子孫からの圧力に晒されながら、ヴィンターは記録官としての職務を貫く決断をする。
十年遅れて、その声はようやく届く。