あらすじ
結婚する前、義父母は私たちに約束していた。
白庭町にある、評判のいい公立小学校の学区内のマンション。将来はそこに、私と直人、そしていつか生まれてくる子どもが住めばいい、と。
けれど結婚三年目、夫の妹である真由が離婚した。
義母は、一本の電話でその約束をなかったことにした。
「真由は一人で子どもを育てなきゃいけないのよ。白庭町のマンションは、しばらくあの子たちに使わせましょう」
私は言葉を失った。
「でも……あそこは、私たちが住むって話でしたよね?」
義母の声が、すぐに冷たくなった。
「あなたたちはまだ若いんだから、いくらでもやり直せるでしょう。今は真由のほうが困ってるのよ」
私は反射的に、隣にいた夫を見た。
直人は数秒黙ったあと、私と目を合わせないまま言った。
「とりあえず真由に使わせよう」
「俺の妹なんだし、今は本当に大変なんだから」
あのときの私は、まだ知らなかった。
マンションのことなど、ほんの始まりにすぎなかったことを。