あらすじ

ノヴァル王国の大聖女アニエスは、多くの人に尊敬される完璧な聖女である。 祈り、結界を張り直し、人の話を聞き、笑って頷く。断ったことは一度もない。 ――ただし、夜は別の話だ。 日が落ちると、彼女は自分でも知らないうちに屋根の上へ出る。 狙うのは、うなるほど持っている側だけ。 蔵から一晩に一軒だけ盗み、困っている誰かへ届け、そして必ず対価を取る。 「タダではやらない。おまえの持ち物で、いちばんいいものを、一つ出せ」 追うのは護衛騎士ライナルト。六年ずっと大聖女を守ってきた、この国でいちばん真面目な男である。 彼は今夜こそ捕まえるつもりで屋根へ上がり、今夜も手を伸ばし、今夜も鼻先で笑われる。 「捕まえたいなら、もっと上手にどうぞ」 朝が来る。何も覚えていない大聖女が、いつもの顔で彼を迎える。 「まあ、大変ですね」 ――この人だ、とは、まだ誰も言えない。 取り逃がすたびに惚れていく騎士様と、覚えていないまま笑う大聖女の、少しも進まない恋の話。

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小説を読もう2026/08/16
  • 現在の作品大聖女様は今夜も大泥棒 ~真面目な騎士様は、今夜も取り逃がす~