あらすじ
退職代行会社で限界社畜として働いていたのに、手法が悪どすぎて会社をクビになった瀬野春之、39歳。
目を覚ますと、そこは生前に遊んでいたファンタジーRPGの世界。しかも転生したのは、三年後に主人公たちによって処刑される悪役貴族ゼノ・ヴァルディスだった。
だが、ゼノは破滅を回避する気などなかった。
「どうせ三年後に死ぬなら、それまで好き放題してやる!!!」
前世では散々使い潰される側だったのだ。
今度は自分が人を使う側になり、酒! 金! 賭事!
贅沢の限りを尽くしてやる。
そんなゼノの前に現れたのは、悪徳商人に使い潰され、今にも死にそうな銀髪の美少女奴隷ネマ。
誰からも役立たず扱いされていた彼女だが、《人物鑑定》で見れば、とんでもなく優秀な訳あり人材だった。
ならば、その価値を商人に教えてやる必要などない。
「弱り切っている。奴隷としての価値は低い。俺が買ってやろう」
ゼノはネマを安く買い叩く。
有能な奴隷なら徹底的に働かせる。
ただし、死なれれば損だから食事を与える。
壊れれば損だから治療する。
長く使うために寝床を与え、働きすぎれば休ませる。
さらに戦闘能力に優れた金髪の美少女奴隷メソも安く買い叩き、護衛としてこき使う。
すべては自分が楽をして、三年後まで好き放題に暮らすため。
――そのはずだった。
「こんな神待遇、見たことがありません」
「私は一生、旦那様にお仕えします」
使い潰されていた有能な奴隷たちは次々と才能を開花させ、なぜかゼノへ忠誠を誓い始める。
横領していた家令を切れば使用人に感謝され、役立たずな管理者を追い出せば仕事が回り、気づけば領地まで豊かになっていく。
そしてついには王国中で、
「悪名高きゼノ・ヴァルディスは、実は稀代の善政領主なのでは?」
と噂されるようになってしまい――。
「何を勘違いしている? 俺は善人じゃない」
ゼノはまだ知らない。
自分では悪役貴族らしく好き放題しているつもりの行動が、ことごとく人を救い、三年後の処刑からどんどん遠ざかっていることを。