あらすじ
四十歳で、誰かに譲ってばかりの一度目の人生を終えた灰原灯里。
次に目覚めた異世界では、公爵夫人として九十二年を生き、大往生した――はずだった。
三度目に目を開けると、そこは2003年4月。
十五歳、高校一年の春。
一度目の人生が壊れ始めた、カトリックのお嬢様校だった。
魔法もステータスもない。
持ち込めたのは、未来の記憶と、長い人生で培った観察眼、社交の胆力、実務能力、そして護身の型だけ。
「みんなのため」
「あなたなら大丈夫」
「奉仕の心で」
善意の顔をして自分へ押しつけられてきた役割を、今度の灯里は礼儀正しく断っていく。
そんな中、灯里は、誰にも露骨に嫌われてはいないのに、少しずつ「いないもの」にされている少女・白瀬桜子と向き合う。
二人が冗談半分で始めたのは――
「失われた青春回収委員会」。
ガラケー、MD、プリクラ、使い捨てカメラ。
放課後の寄り道、くだらないお菓子、失敗した写真。
百年以上の人生経験があれば、制度の穴も、人間関係の思惑も見抜ける。
でも、友達と笑うことも、無駄な時間を過ごすことも、「楽しい一日」を作ることも、予定表どおりにはいかない。
これは、人生を完璧にやり直す物語ではない。
一度も自分のものにできなかった十五歳を取り戻し、その空いた場所へ、前にはなかった時間を作っていく物語。
都合のいい子、卒業します。