あらすじ
王都から離れた寂れた街エルディア。その路地裏に、看板一つを掲げた小さな古道具店がある。
店主の名はカイン。かつて王都で《神の手》と称えられながら、今は《心のない修復師》と呼ばれる青年だ。
彼には、物に触れると、そこに残された「記憶」を読み取ってしまう特殊な力があった。
その力ゆえに他人の人生の傷跡まで覗いてしまい、ある出来事をきっかけに人との関わりを断ったカインは、壊れた物だけを相手に静かに暮らしていた。
だが、ある嵐の夜。
店の奥で見つけた古びたオルゴールが、彼の静かな日々を変える。
壊れているはずのオルゴールがひとりでに旋律を奏で、その光の中から現れたのは、自分が何者なのかさえ思い出せない少女――リコ。
しかも彼女には、あるはずの「影」がなかった。
そしてリコの出現を境に、カインのもとには不思議な古道具と、そこに残された「忘れられた記憶」が集まり始める。
七枚の花弁の紋様。
謎めいた白い獣。
炎に包まれた街。
そして、記憶の中で響く少女の声。
――忘れないで。
壊れた物しか信じなかった修復師と、過去を失った少女。
これは二人が古道具に残された記憶をたどりながら、歴史から消された過去と、それぞれの「失ったもの」を少しずつ取り戻していく物語。