あらすじ
~登場人物の紹介とあらすじ~
i)登場人物の紹介
真菜華(まなか)
古文書の修復と筆跡鑑定を仕事にする女性。分別はあるが、相手が名家の人間でも遠慮なくものを言う。十五年前、文書偽造の罪を着せられた母の汚名を胸に抱えながらも、「信じたいこと」と「証明できること」を決して混同しない。
尚登(なおと)
名家・月城家の嫡男。博識で、自信に満ち、長期戦にもひるまない。取り壊し予定の「星降る温室」で発見された古文書の鑑定を真菜華へ依頼する。家の名誉よりも事実を選び、真菜華とともに三十年前の秘密へ踏み込んでいく。
瑞羽(みずは)
自分の能力を信じる筆跡鑑定の協力者。他人と競うのではなく、自分の目で文字を見極める。
莉奈(りな)
論理的で慎重。散らばった記録や法的な事実を整理し、真実を公的な記録へつなげていく。
敏彦(としひこ)
友人を大切にする新聞記者。人への聞き取りと細かな資料調査で、役所や過去の記録を追う。
快都(かいと)
月城家の過去を知る男性。感情を隠すことに長けているが、十五年前から抱えてきた秘密と向き合うことになる。
ii)あらすじ
古文書修復師の真菜華に持ち込まれたのは、三か月後に取り壊される古い硝子温室で見つかった文書箱だった。
箱に貼られた札には――「永久保存」。
その文字は、十五年前に文書偽造の罪を着せられた母の筆跡によく似ていた。
箱の中から現れたのは、すべてが**「白い恋人へ」**と書き始められた二十八通の手紙。月城家では、かつて温室で密会を重ねた誰かの恋文だと伝えられていた。
けれど真菜華は、甘い言葉の奥に小さな違和感を見つける。
異なる筆跡。
年代の合わない紙。
「甘い時間」という謎めいた言葉。
削られた一行。
そして、正式な受理番号のない土地寄贈の「撤回」。
恋文を一通ずつ読み解くたび、三十年前に研究へ情熱を注いだ女性たちの存在と、月城家によって隠されてきた真実が浮かび上がっていく。
母は本当に文書を偽造したのか。
「白い恋人」とは誰なのか。
なぜ星降る温室は、永久保存されなければならなかったのか。
証拠だけを信じる真菜華の隣で、家の過去さえ隠さず差し出す尚登。
謎をほどくために始まった二人の時間は、やがて、どんな古文書にもまだ書かれていない想いへと変わっていく。
紙は永久保存できる。
けれど恋は、毎日新しく書き足していくものだから。