あらすじ
雪解けの北海道・滝川。石狩川の河川敷で、乳児の白骨遺体が発見された。
その乳児は前年の秋、父親と思われる男に連れられて、救急病院を訪れていた。しかし男は、治療を受けさせることなく乳児を連れて逃亡。出生届も母子手帳もない、無戸籍の子だった。
捜査線上に浮かんだのは、沢田則夫という男。
取材のため故郷・滝川へ戻ったゆう子は、則夫の兄・昭夫を訪ねる。
そこで知ったのは、沢田兄弟が幼い頃に抱えていた家庭の事情と、二十年以上にわたって封じられていた、ある事件だった。
一方、乳児が最後に運び込まれた病院では、奥尻島の大津波で妻と娘を失った院長と、その息子である救急医・時田秀和が、確執を抱えていた。
ひとつの事件をきっかけに、それぞれの人生に埋められていた「過去」が掘り起こされていく。
発達障害、虐待、貧困、家族の傷。
過去は消せない。
それでも、人は過去を抱えたまま、生き直すことができるのか。
過去の人間を、現在の価値観で裁くことはできるのか。
罪を犯した人間を「許す」とは、罪をなかったことにすることなのか。
北海道の厳しい冬と短い春、大地に残る記憶を見つめながら、物語は「罪」と「罰」のその先へ進んでいく。
彼らの記憶に寄り添うように、北海道の大地を一匹のキタキツネが歩いていく。