あらすじ

合唱部の伴奏者である私は、指揮者の森下くんに片想いしている。 音楽室の窓はいつも五センチだけ開いていて、その隙間から入る風で季節の変化を知る——そんな些細なことばかり、私は彼のそばで覚えてきた。彼の左手にある、古い絆創膏の跡もそのひとつ。 ある日、森下くんから「引っ越すことになった」と告げられる。合唱コンクールの本番まで、あと三週間。 気持ちを伝えようと決めたのに、月曜も、水曜も、金曜も、言い出すタイミングは私より少しだけ早く過ぎていく。 迎えた本番前日、最後の合奏練習の日。私は思い切って尋ねる。「あの絆創膏の跡、いつも触ってる。気づいてた?」 返ってきた答えは、私がずっと"自分だけに向けられている"と思っていた彼の癖の意味を、静かに裏返すものだった。

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エブリスタ
エブリスタ2026/08/14
  • 現在の作品同じ楽譜を見ていた最後の合奏