あらすじ

1941年7月1日、ニューヨーク。 テレビがまだ「未来の箱」と呼ばれていた時代。 午後2時29分――。 新しく商業放送を始めたWNBTの画面に、一枚のアメリカ地図が映し出される。 その中央には、ひとつの時計。 そして、秒針が静かに時を刻み始めた。 時計ブランド・Bulovaの、わずか数秒の広告。 それは後に、世界初の正式なテレビCMとして歴史に刻まれることになる。 だが、その瞬間を見ていた人々の中に、歴史には決して名前を残さない一人の少女がいた。 ――エリザベス・“リズ”・カーター、19歳。 WNBTで働く技術助手の彼女は、その日の放送中に奇妙な現象を目撃する。 Bulovaの時計が午後2時29分を指した瞬間。 画面に映るはずのない「もう一つの映像」が、一秒だけ重なったのだ。 そこに映っていたのは、見知らぬ青年。 そして彼の腕には、同じBulovaの時計があった。 「……どうして?」 その青年が口にした言葉は、なぜかリズにだけ聞こえた。 ――「君は、この時間を覚えている?」 その夜、リズは放送局の倉庫で一冊の古びた放送記録を見つける。 そこには、1941年7月1日の放送予定には存在しない、奇妙な一文が書かれていた。 『2時29分――未来から来た者が現れる』 第二次世界大戦の影が迫るアメリカ。 ラジオから流れるニュース。 新しい時代を告げるテレビ。 そして、正確な時刻を刻み続ける一つの時計。 世界で初めてテレビCMが放送された、たった数秒の「空白」。 その空白には、誰にも知られていない秘密が隠されていた。 リズは、あの画面に映った青年を探し始める。 しかし青年を追うほどに、彼女は気づいていく。 自分が歴史を変えようとしているのではない。 すでに歴史の中に、自分自身が組み込まれていたのだ。 そして次の2時29分。 Bulovaの秒針が再び動き始めたとき、リズの前に現れた青年は告げる。 「僕たちが出会えるのは、今日が最後なんだ」 これは、世界で初めて「テレビに時間が映った日」に始まる、 時代を越えた恋と、たった一秒の歴史をめぐる物語。

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エブリスタ
エブリスタ2026/08/15
  • 現在の作品『2時29分のテレビジョン ――Bulovaが刻んだ、最初の一秒――』