あらすじ
私の夫は、夜になると怪物になる。
午前零時を過ぎると体温を失い、肌は鱗に覆われ、優しかった瞳は獣の光を帯びる。それでも朝になれば、シキはいつものようにコーヒーを淹れ、私の名前を呼んでくれる。
彼はいったい何者なのか。
隠された書斎で見つけた古い戸籍と手記が明かしたのは、百年以上ものあいだ、人間を愛することでこの世界に留まり続けてきた「影」の存在だった。
そして満月の夜、シキは完全な怪物へ変わる。
逃げるか、彼の名を呼ぶか。
私は恐怖のなかで、彼の冷たい巨体に手を伸ばす。
「あなたは怪物なんかじゃない。私の夫よ」
夜の彼も、朝の彼も、どちらも私の愛するシキだから。