あらすじ
十二歳の少女ネルには、名字も戸籍もない。
スラムを仕切る男に盗みを強いられていたネルは、盗んだ薬を病気の少年へ渡し、殴り殺された。
死後に目覚めたのは、何もない真っ白な部屋だった。
そこで待っていた美しい女神メルアは、母親のような声で告げる。
「よく耐えました。もう痛くありません。次こそ、幸せになれます」
記憶と痛みを消されたネルは、十二歳の姿のまま新しい場所へ送り出される。
だが、待っていたのは幸せではなかった。
豊作を願う農夫婦に傷つけられ、商会では金貨のために血を流させられ、見世物小屋では治りの早い身体を壊され続ける。
神殿では他人の罪を押しつけられ、戦場では兵士たちの傷を引き受けさせられ、最後には王国一つ分の罪を背負わされた。
それでも少女は、毎回誰かを救ってから死んだ。
七度目の死を迎えたとき、救われた七人の声が、消されたはずの記憶を呼び戻す。
自分がなぜ苦しめられ続けたのか。
自分を傷つけた者たちが、なぜ富と名誉を手にしたのか。
そして、優しい女神が何を食べていたのか。
すべてを思い出したネルへ、メルアはまた同じ言葉をかける。
「よく耐えました。もう痛くありません。次こそ、幸せになれます」
「それ、七回目です」
七度奪われた少女は、八度目にすべてを奪い返す。