あらすじ
妹の婚礼当日に靴が壊れたそうですが、もう無料では直しません――私の作った一足で再び踊れた公爵様と、今度は人生を並んで歩きます。
「靴の手入れしかできない使用人女」
婚約者モーリスにそう蔑まれ、妹との婚約を発表された令嬢リュネール。
それでも妹の婚礼靴だけは無料で完成させろと命じられた彼女は、初めてはっきりと告げる。
「靴紐一本でも、私の仕事です。もう無料では直しません」
家を出たリュネールが王宮で任されたのは、どんな舞踏靴を履いても足を痛めてしまう王女の一足だった。
採寸、足型、革、靴底、荷重の分散――。
立っているときだけでなく、歩き、回り、踊る足へ靴を合わせる技術を認められ、リュネールは王宮専属靴師への道を歩み始める。
やがて彼女が向き合うのは、戦傷による痛みと杖を哀れまれることを嫌い、舞踏会を諦めていた公爵エドリック。
傷を治すとは約束しない。
無理に歩かせることもしない。
速さも距離も、立ち止まる時も、本人が決められる一足を作る。
一方、見た目ばかりを優先した妹の婚礼靴は当日に壊れ、主人公を呼び戻そうとする元婚約者の規格靴事業にも苦情が相次いで――。
無料の使用人扱いを拒んだ令嬢が、その技術を正式な仕事として認められ、自分自身の人生を選び直すお仕事令嬢ファンタジー。
「速く歩ける日だけではない。止まる日も、君と同じ歩幅で生きたい」