あらすじ
「食べられないものを、先に教えてください」
料理人のユウトが仕事場の食品庫を開けると、そこは見知らぬ異世界の森だった。
金も家も身元を証明する物もないユウトを拾ったのは、ドワーフの大工マルタ。彼女から金を借り、町の古びた店を直したユウトは、小さな『ひだまり食堂』を開く。
店の厨房にあるのは、異世界の硬貨を入れると、米やしょうゆ、香辛料など故郷の食材を買える不思議な白い戸棚。ただし、届くのは食材だけ。水も火も調理も、客が安全に食べられるかどうかの判断も、すべてユウトの仕事だった。
獣肉を食べられないエルフ。仕事中は酒を避けるドワーフ。同じ家族でも異なる食の決まりや好き嫌い。
ユウトは一人ひとりの事情を聞き、必要なら鍋や包丁、揚げ油まで分け、町の食材と故郷の味を組み合わせていく。
きのこのバターしょうゆご飯、熱々のカレーライス、チーズ入りのじゃがいもコロッケ――。
料理だけで悩みが消えるわけではない。それでも温かい一皿を食べた客は、満ちた腹と少し軽くなった足取りで、仕事や家族の待つ日常へ帰っていく。
空っぽだった食堂が、種族を問わず「自分の食べられる料理」を安心して頼める場所へ育っていく、ほのぼの異世界料理ファンタジー。