あらすじ
王城の酒宴の卓で出す物を失った王太子エーリクは、十年の縁を結んでいた公爵令嬢ジゼルを譲ると札に書いた。「この女なら惜しくない。婚約は今日で終いだ」。公爵家が黙って払ってきた負けを帳面に控え、家を預かってきたジゼルは、泣きも縋りもせず卓を離れる。エーリクはその勝負に負けた。
札を取ったのは、卓にいた金貸しだった。買い取れと迫られてもジゼルが金を出さねば、男は言葉どおり札を持って社交界を回る。
新しい相手の披露の宴で、王妃が札をエーリクの前に置く。卓にいた貴族たちが、一人ずつ席を立つ。三つの領と年金を没収され、母方の領へ退くのはエーリクである。ジゼルが人前で初めて笑うのは、そのあと下る南の湊である。