あらすじ
旧優生保護法が廃止されず、名前と建前だけを変えながら現代まで存続した日本。
少子化、社会保障費の増大、治安悪化。政府はあらゆる問題を解決する切り札として、新たに「国民健全化及び純度維持法」を成立させた。
障がい者、LGBTQ、外国人、帰化人、国際結婚家庭。
国家が「不健全」「不純」と判定した者には、医療、福祉、就職、結婚、出産、居住の権利が段階的に制限される。
全身性ジストニアと構音障害を持つ青年に届いた国民純度審査の結果は、百点満点中十二点。
しかも、役所の質問に正直に答えただけで、反国家思想の疑いまで追加されてしまう。
「意思疎通が困難」と記録する職員に、青年は文字入力端末で返した。
『意思はあります。あなたに読解力がないだけです』
その一文がネット上へ流出し、青年は一夜にして排除政策への抵抗の象徴となる。
一方、外国人労働者を追放したことで介護施設は閉鎖。障がい者を減らしたことで医療研究は停止。LGBTQを存在しないことにした政府では、担当大臣の息子が統計上から消える。
さらに国民の血統を調べた結果、政治家、官僚、皇族、財界人にまで「不純」の判定が続出。
慌てた政府は、国家に貢献した者だけを純粋と認める「名誉純粋国民制度」を創設する。
純粋さは、寄付金で買えるらしい。
排除を支持していた国民たちも、病気、事故、失業、離婚、外国人との交際、政府への批判を理由に、一人ずつ審査対象へ加えられていく。
そして青年は気づく。
この法律が探しているのは、純粋な日本人ではない。
病気にならず、老いもせず、外国と関わらず、税金だけを払い、子どもを産み、政府へ逆らわない、存在しない国民なのだ。
これは、国民を守るために国民を消し続ける国家と、皮肉を言っただけで国家最大の反逆者にされた障がい者の、笑えないほど笑える社会風刺ブラックコメディ。