あらすじ
「魔力なしのクズのお前なんかを好きなフリするの、大変だったよ」
親同士が決めた婚約のために、家も、商売道具も売り払って王都へ出てきたエミリア。
待っていたのは、幼馴染だったはずの婚約者ダリオからの、婚約破棄と嘲笑だった。
魔力を持たないエミリアは、魔物解体屋として生きてきた。
けれどダリオは「魔力なしに解体などできるはずがない」と決めつけ、詐欺師と罵り、取引先のすべてに手を回す。
住む家も、仕事も、恋も失って、エミリアは王都の路上に放り出された。
拾ってくれたのは、小さな宿屋の女将だった。
給金は出ない。けれど、三食と、屋根がある。
そしてエミリアの包丁が入ったその日から、宿屋の肉の味が変わった。
「美味しい! こんなに柔らかく、肉の旨みがガツンとくるなんて、どんなに良い状態の肉でもありえない!」
魔力がないからこそ、エミリアには魔力の流れが感じ取れる。
それは、この世界の誰も持っていない解体の技だった。
——その頃、ダリオの商会の売り上げは、十分の一以下に落ちていた。
だが、ダリオの没落さえ、これから起きる変化の始まりにすぎなかった。
エミリアの包丁が引き出せるのは、肉の旨みだけではない。これまで価値がないと捨てられてきた魔物の部位から、ゴムのように伸び縮みする新素材まで——彼女にしか見抜けない魔力の流れは、魔物の未知の可能性を次々と明らかにしていく。
一軒の宿屋の食卓から始まった変化は、やがて人々の暮らしそのものへ広がっていく。
第二話まで短編版と同じです!
短編とは展開が異なります!