あらすじ
「エレオノーラ・フォン・アーデルハイト! 私は今日、この場で君との婚約を破棄する!」
夜会の壇上、王太子エドワードが高らかに宣言した。理由は、男爵令嬢への「いじめ」。だが婚約者エレオノーラは涙一つ見せず、静かにこう答えた。
「承知いたしました。それでは、これで私も自由ですね」
呆然とする王太子。ざわめく貴族たち。けれどこれは、悲劇の始まりではない。エレオノーラにとっては、三年越しの計画が、ようやく形になった夜だった。
三年前、王国の財政資料に不審な金の流れを見つけたエレオノーラ。警告しても「疑いすぎだ」と取り合わない婚約者に見切りをつけ、彼女は誰にも悟られぬまま、婚約破棄後を見据えて静かに動き始めていた。
公爵領へ戻った彼女は、港を整備し、鉱山を開発し、農地を改革する。王家に頼らずとも生きていける領地へと、着実に作り替えていく。
そんな彼女の前に現れたのが、隣国ヴァレンティア帝国の王太子アルベルト。彼は、彼女を「可哀想な令嬢」としてではなく、一人の有能な貴族令嬢として真正面から評価する、唯一の人物だった。
「王国は、惜しい人材を捨てたな」
婚約破棄は、終わりではなく始まりだった。自分を切り捨てた王国をよそに、公爵令嬢は自分の力で、自分の人生を選び取っていく。