あらすじ
病弱な父に代わり、五年間アーレンス伯爵領の経営を切り盛りしてきたレオノーラ。荒れていた領地を立て直し、近隣でも指折りの収益を上げるまでになった。
「これ以上、お前一人に無理はさせられない」
「ちょうどいい許婚が見つかったの」
「僕が支えるよ、レオノーラ」
親族会議の場で、父・叔母・従兄コンラートが順番にそう告げる。負担を気遣うふりをしたその実態は、婚姻という手続きを使い、彼女が立て直した領地の実権を、野心のある従兄に丸ごと明け渡させることだった。
「婚姻をもって、差配をコンラート様に引き継がせる。そういうことでございますね」
レオノーラは動じない。なぜなら一年前から、ある布石を静かに打っていたから。
「一年前より、当領地の経営権は、信託契約として移してございます」
顔色を失っていく親族たち。だが、これは大団円の物語ではない――。