あらすじ
昔から続く商店街。
その片隅に、いつからあるのか誰も覚えていない古びた空き家がある。
取り壊そうとしてもなぜか話が進まず、いつの間にか店先には小さな看板が掛かっている。
「喫茶店 月と魔法」
店内にいるのは、一人の魔女。
ただし、彼女の姿は客によって違う。
ある人には美しい少女に。
ある人には優しい老婆に。
ある人には亡くした母親に。
ある人には恐ろしい魔女に。
そして異世界の人間には、彼らの世界で最も美しい姿に見える。
彼女は客の願いを直接叶えない。
代わりに、一杯の紅茶、一皿の菓子、奇妙な魔法道具を差し出して言う。
「さて、お客様。本当に欲しいものは何でしょう?」
この店は、無数の世界と繋がっている。
現代日本の商店街から訪れる人もいれば、
剣と魔法の世界から来る冒険者もいる。
獣人の少女、勇者、魔王、竜、人魚、妖精。
ときには別の宇宙から来た客まで。
彼らがこの店に辿り着くのは偶然ではない。
誰かの人生が、ほんの少しだけ道を間違えたとき。
「もし、あのとき違う選択をしていたら」
そう願った者の前にだけ、この店の扉が現れる。