あらすじ
――「妹が目覚めるその日まで、私はどれだけでも汚れよう」
蒸気と煤煙に濡れる霧の都・ロンドリウム。石炭のにおいが染みついた路地裏で、リリアナ・ヴェスパタインは今夜も罪を重ねる。
七年前、不治の「灰化病」に侵された最愛の妹を救うため、彼女は忘れ去られた古の神と契約した。妹が眠る「永い眠り」の治療法が見つかるその日まで、決して死なぬ身体を。
代償は、人としての生。
パンは砂の味しかせず、紅茶は錆の匂いしかしない。渇きを癒すのは、ただ人間の血のみ。
そんな彼女の前に現れたのは、教会所属の吸血鬼ハンター、シリル・アッシュフォード。銀の弾丸を装填し、彼女の心臓を狙う若き狩人。——しかし彼は、引き金を引けない。
「……なぜ、撃たない?」 「さあな。今夜の分の血は、俺のを持ってきた」
殺すべき怪物と、殺せない狩人。妹のために「化物」でいることを選んだ姉と、任務のために「人間」を捨てられない青年。
これは、永遠を呪われた少女が、たった一つの春を取り戻すまでの——堕ちて、堕ちて、それでも赦されたい、罪と献身の物語。