あらすじ
五年前、交通事故で両親を失った。
当時十歳だった桜井美咲は、一命を取り留めたものの、事故によって下半身に障害が残り、車椅子で生活することになった。
両親のいない日々。
自分の足で歩けない現実。
そして、あの日の事故を忘れられない心の傷。
それでも美咲は祖母に支えられながら、少しずつ前を向いて生きてきた。
そして高校入学の日。
新しい制服に袖を通し、桜の舞う校門をくぐった美咲は、一人の少年と出会う。
相沢蓮。
優しく、どこか寂しそうな少年だった。
けれど数日後、美咲は知ることになる。
彼の父親こそ――五年前、自分の両親を死なせた事故の加害者だった。
「あなたのお父さんが、私の両親を殺した」
被害者の娘と、加害者の息子。
憎むべき相手は目の前にいる。
それでも、蓮自身は何もしていない。
やがて美咲の前には、もう一人の「相沢」が現れる。
蓮の母親であり、現在は障害者ヘルパーとして働く女性。
そして彼女は、美咲の生活を支える担当者だった。
両親を奪われた少女。
父親の罪を背負う少年。
罪を犯した夫と決別し、被害者を支える女性。
同じ事故によって人生を変えられた三人が、交わるはずのなかった人生を交差させていく。
これは、誰かを許すことの物語ではない。
失ったものを抱えながら、それでも自分の人生を生きていくための――家族と罪と再生の物語。