あらすじ

「この子が、七年付き合ってるっていう彼女なのね? 本当にきれいな子。今日の結婚記念パーティーも、こんなに丁寧に準備してくれて……蓮が七年も大切にしてきた理由がわかったわ」 蓮は美緒を見て微笑んだだけで、否定しなかった。 この日のために一か月近く走り回って準備してきた私は、宴会場の入口で受付を任され、行き交う招待客の向こうから三人を見つめることしかできなかった。 ホテルの廊下で、とうとう我慢できず蓮の腕をつかんだ。 「どうして美緒を、私の代わりにしたの?」 「美緒は今、新鋭デザインアワードに挑戦してるんだ。業界の人脈を広げる必要がある。うちの両親はこの業界が長いし、将来の嫁だと思えば、ちゃんと力になってくれるだろ。それに晴香、俺たち、まだ結婚の話までしてないよな? 今そんなに親に会いたいって……そんなに俺と結婚したいの?」 頭の中で、何かが弾けたような気がした。 言葉を失った私の髪に、蓮は何事もなかったように軽く触れた。 「もう怒るなよ。美緒を助けるのだって、晴香の家族を助けるようなものだろ? 親に紹介するべき時が来たら、ちゃんと紹介するから」 そのとき、宴会場の入口から美緒の声がした。 「蓮、ご両親が呼んでるよ」 振り返った蓮の表情が、目に見えて柔らかくなる。 「今行く」 そのまま美緒のほうへ向かっていく背中を、私はもう追わなかった。 スマートフォンを取り出し、南雲市に住む親友、藤原栞にLINEを送る。 「栞。前に話してた人、今週末に会えるようにしてくれる?」 栞が以前から紹介したがっていたのは、桐生悠真。 Lynx Designの親会社である桐生ホールディングスの専務取締役で、グループ内では蓮より上の立場にいる人だった。 七年待った末にもらった言葉が、「親に会う資格なんてまだない」なのだとしたら。 こんな男、欲しい人にくれてやればいい。 もう、いらない。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/15
  • 現在の作品7年間の恋を“妹”に取られた後、私は“彼の上司”と結婚した