あらすじ
目を覚ますと、私は白銀の仔馬になっていた。
額には一本の角。背中には、まだ飛べない小さな翼。
どうやら私は、人間ではなく《幼生アリコーン》に転生したらしい。
前世では、病院で働く看護師だった。
新しい身体には、水や毒を清める《浄化》、傷を癒やす《治癒》、土地へ生命力を与える《祝福》、人の心へ言葉を届ける《念話》が備わっている。
けれど、その力はまだ弱い。
器一杯の水を浄化するだけでも疲れ、重傷者を無理に治せば自分が倒れる。畑を祝福しても、作物が勝手に実るわけではない。
そんな私が最初に出会ったのは、病気の母を連れた一人の少女だった。
彼女を助けて辿り着いた村は、もっとひどかった。
黒く汚染された井戸。
枯れた畑。
増え続ける病人。
不足する食料と薬。
そして、周囲を蝕む瘴気。
一度に全部を救う力なんて、私にはない。
だから、できることから始める。
飲める水を作る。
病人の状態を見極める。
傷を清潔にする。
感染を広げない。
食べられる人には食べてもらい、休める人には休んでもらう。
魔法だけでは足りないなら、人の力を借りればいい。
薬師には薬草を。
農民には畑を。
狩人には森を。
私は、私にできることを。
そうして目の前の一人を助け続けていただけなのに――。
滅びかけていた村には人が戻り、難民が集まり、商人が訪れ、やがて種族を問わず傷ついた者たちが集まるようになる。
そしていつしか、その土地はこう呼ばれ始めた。
――《聖域》と。
これは、一人の患者を支えていた元看護師が、小さな聖獣へ転生し、村を、土地を、そして世界そのものを癒やしていく物語。