あらすじ

崩滅の日ののち、荒れ果てた世界の各地に、誰が作ったとも知れぬ異空間が現れた。山の腹に果てのない麦の原が広がり、地の底に波の音が響く。中の恵みは採っても尽きることがなく、飢えた人々の命脈をつないだこの箱庭は、いつしか「内界」と呼ばれ、人の暮らしに欠かせぬものとなった。ただし内界には、時を置いて異形のものが湧く。恵みを集める採り手、異形を間引く狩り手、安全を預かる守り手。内界をめぐる三つの生業が生まれ、人と内界の付き合いは二千年に及ぶ。 本書は、学都ヴェレンの民俗地理学者ダイン・ロ・ヴァルガによる見聞録である。「踏まざるを書かず」を信条とする実踏派の徒にして、若き日は狩り手として剣を振るった変わり者の学者が、十五年の踏査から九つの内界を選び、その驚異と、そこで生きる人々の姿を書き記す。台帳は恵みの数を語り、学者の論は内界の正体を争うが、内界の門をくぐった人間がどんな顔をするかは、共に歩いた者にしか書けない。最古の発見の手記に始まり、管理の仕組み、三つの生業を経て、旅は九つの内界へ。誰の恵みとも知れぬまま、今日も人は門をくぐる。その営みを、旅装の学者が快活な筆で案内する一冊である。

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小説を読もう2026/08/15
  • 現在の作品内界諸国見聞紀行~無限の麦畑、地底の海、星降る荒野――エルデーン奇境旅行記~