あらすじ

ロッタ・ヴェルクは、山ひとつ向こうの村から三日かけて王都へ出てきた。 目的は宮廷魔法学校の入学試験――ただし、受かるつもりはない。村のみんなが見送ってくれたから、記念に受けてみるだけ。 受付の〈階梯〉が彼女の魔力を測って、こう出た。 ゼロ。 嘲笑のなか始まった実技試験で、飛んできた炎の球に向かって、ロッタは革の手袋を外した。 「――いま、殴っていいですか?」 ぱん、と乾いた音がして、炎が消えた。 魔法は魔力で編まれている。魔力を持つ手は自分の魔力に弾かれて、編み目に指を入れられない。 だから、この世界でただひとつ魔法を素手で砕けるのは――魔力がゼロの手だけだった。 名門の令嬢が三十七を数えるあいだ組み上げた大魔法も、無敗と呼ばれる少年の最上級魔法も、 彼女の前では、完成した瞬間に、ぱん、と消える。 拳は焼ける。腫れる。一日に三度。その日の数を超えて握ると、指が開かなくなる。使い切った次の日は、一度だけ。 それでもロッタは、拳を固めるまえに、律儀にこう訊く。 「――いま、殴っていいですか?」 ――ただし、五日目に一度だけ、彼女は訊かなかった。 これは、何ひとつ生み出せないと言われた娘が、 壊すことだけで首席まで駆け上がる話である。

連載情報

ウェブ小説

配信言語
小説を読もう
小説を読もう2026/08/15
  • 現在の作品魔力ゼロの田舎娘、宮廷魔法学校の入試で最上級魔法を素手で殴り砕き、首席になりました